7月中旬に始まったユダヤ式ライフコーチング講座は2回の授業の後で8月は1ヶ月間の夏休みになり、2週間前の日曜日と今週日曜日に第3・4回目の授業がありました。この2回の授業はいずれのクライアントとの関係が大きなテーマで、より具体的には、第3回目はクライアントとの関係の構築について、第4回目はクライアントとの関係の維持のためのスキルについての授業でした。
授業の途中ではこれらのテーマに関連する内容で先生が受講生の何人かを相手にして見事なコーチングの実演も即興で見せてくれましたが、実際に自分でもやってみようとするととても難しいのだろうなと、東欧ユダヤ民俗ダンスとかクラヴマガとかを習い始めた頃のぎこちない動きの自分をふと思い出しました。ただ、東欧ユダヤ民俗ダンスやクラヴマガと違って、近々早速始まるらしい我々受講生同士でのコーチングの実習に当たっては事前に「振り付け」や「型」の稽古はどうもなさそうですし、そもそもコーチングの実践の手順を厳密な流れ作業のように体系化するのはおそらく不可能なのでしょう。原則を教わって頭で理解したら、後は実践を通してコーチングの「筋肉」を脳神経に書き込んでいくというふうに、コーチングの実践の学習がまさに神経可塑性の応用に他なりません。
第3回目の授業のテーマであったクライアントの関係の構築では、コーチとして鍛え磨き続けるべき聞く力の重要性を痛感すると共に、私自身を含めて我々の多くが普段の会話(そして授業や講演)の中でどれだけ相手の話を聞いていないかも改めて気付かされました。この聞く力というのは普段の生活の中でも意識すれば鍛えていけるものであり、コーチングという狭い枠組み以外でも、その貴重さのゆえ円滑な人間関係全般の構築にも寄与するところが少なくなさそうです。
聞く力全般とその技術に関しては回を改めてまた詳しく書こうと思っておりますが、コーチングという文脈において能動的に聞く力が果たす役割として今回の授業では以下のようなことを学びました。言われてみれば、どれも当然のこととすぐに納得できることばかりで、コーチングにおいては質問力以上に聞く力が重要であること、そして自分にはまだ身につけなければいけないことがたくさんあることを痛感した次第です。
- クライアントをよりよく知るために
- クライアントが心を開き何でも気軽に話せるような雰囲気を醸成するために
- クライアントに自信を持たせてあげるために
- クライアントが最善の解決策を自分で見つけられるよう促すために
第4回目の授業のテーマであったクライアントの関係の維持では、まずは Refuah Institute 流のユダヤ式ライフコーチングの過程として以下の10の段階が紹介されました。最初の4段階はコーチングの実践の一部というよりもコーチングに先立つコーチの心構えとでもいった方がより適切かもしれません。そして残りの6段階は主にクライアントに求められることです。
- クライアントへの共感
- クランアントへの敬意
- クライアントへの信用 (trust)
- クライアントへの信頼 (confidence)
- クライアントによる目標の明確化
- クライアントによる自己評価
- クライアントによる自覚と責任
- クライアントによる行動計画
- クライアントによる自信を持った献身
- クライアントによる行動計画の説明責任
時間の制約もあり、これら6つのことをクライアントにコーチとして具体的にはどう求めていくのかまでは今回の授業では残念ながら聞くことができませんでした。我々受講生同士のコーチングの実習と並行して、講座を担当する複数の先生たちの実演も見せてもらえることになっているらしいので、その際は具体的にどこがどの段階に相当するのか注意しながら観察することを忘れないでおこうと思っております。
コーチに求められる聞く力とクライアントへの共感・敬意・信用・信頼の話を聞いていて、ある人物のことがすぐに頭に浮かびました。約2年前からは毎週1回伝統的なユダヤ式のペア勉強をしてもらっていて、私の人生の師でもある、エルサレムの少数精鋭のアシュケナジ系超正統派イェシヴァの長である Rabbi Yehoshua Eichenstein です。この講座のほとんどを担当されている学校長が、これまたアシュケナジ系超正統派ラビであるご自身の師が彼を慕ってやってくる数々の人たちにしてきたことを何と千時間以上も観察して、このユダヤの伝統がライフコーチングに他ならないということを悟ったように、私自身も最近遭遇したある人生の危機を乗り切るためにこの人生の師からにしてもらったことはライフコーチングに他ならなかったということを理解しました。相談に来た相手に一方的に助言を与えるのではなく、まずは相手の話をじっくり聞き、その相手が自分の中に隠された力を自ら見つけ、その力を使って解決策を自ら見つけるよう励まし促すのはまさにコーチングです。
尚、ユダヤ暦新年後の一連の祭日のため、次回の授業は3週間後となります。このブログにお付き合いいただいている皆様には改めて感謝申し上げます。特に、こうした養成講座の授業内容まで知ることは、もし将来仮にクライアントとしてコーチングを受けてみたいと考えられる方々には一見不要に見えるかもしれませんが、実践の手順やその背後にはる考えを事前に知っていただくことはコーチングという共同作業を進めていくに当たっては大きなプラスになるということも念を押されました。
カテゴリー: ユダヤ式ライフコーチング > 講座